大学院

働きながら社会人が通える東大の夜間大学院はあるの?

働きながら社会人が通える夜間の東大大学院はあるの?アイキャッチ画像

社会人としてある程度キャリアを積んで働いていると、
上司や先輩の姿から、自分の将来の大体の給与やポジションが見えてきたり、
友達の収入やライフスタイルなど比較対象もでてきて、
“このまま働いているだけでいいのかな?”と思う時が誰にでもあると思います。
その時、転職や資格取得のための勉強を始める人もいるでしょう。
そして、その時、“大学に入り直す・大学院に行く”と、
少しだけ頭によぎることがある人もいるはずです。
そしてちょっと調べて何だか大変そうだからと、
進路の選択肢から外れていきます。
このブログは社会人の大学院進学を少しでもハードルを下げるために、
色々書いていますが、
今回は社会人が働きながら通える大学院として夜間大学院、
中でも、数少ない夜間の東大大学院について紹介していきます。
ただし、何故東大大学院の多くのコースで
夜間コースや社会人が通いやすいカリキュラムが設定されていないのか、
ということを考えるために、
大学院の“研究職養成”・“実務家養成”という方向性についてもしっかりお伝えします。

なお、社会人として子育てと働きながら東大大学院に合格できた対策については、
こちらのnoteで限定公開していますのでぜひ購読してみてください。

社会人が働きながら大学院へ進学するためのポイント 研究職養成か? 実務家養成か?

進学したいと思う大学院が“研究職養成”、“実務家養成”、どちらを目指しているか?
こういったことを大学院進学について調べているときには
ほとんど気にしたことがないと思います。
ですが、今後あなたが本気で大学院進学に取り組む際には、
進学先や、口述試験での受け答え、研究計画書などに大きく関わるため、
回りくどいですが、このポイントはぜひ理解しておきましょう。
多くの人は大学院を、大学の延長線上にある、
「より深く勉強する場」だと考えています。
たしかに、大学院では勉強し、知識が深まりますが、それは副次的なものです。
大学院では勉強することは当たり前で、
言われなくてもやるもの、
つまり、大学院は勉強することが目的ではないのです。
研究計画書や口述試験で“勉強したい”アピールはNGで、
これは仕事と同じです。仕事でも勉強はしますし、勉強にもなりますが、
勉強するところではありませんよね。

では大学院は何が目的なのでしょうか?
それが“研究職養成”か“実務家養成”かというポイントです。

「研究職を養成する機関」としての大学院とは?

「研究職を養成する機関」としての大学院とは、
大学院進学の先のキャリアとして、さらに後期博士課程に進み、
公立の研究機関や民間シンクタンク、大学教員など、
文字通り研究職として研究で食べていく人を育てることを目的とした大学院です。
古くからある大学院はほとんどがこのタイプです。
専門分野における深い知識の習得だけでなく、
研究者として必要な様々なスキルや態度を培います。
研究職養成の核となるのは、指導教授との密接な関係の中で行われる研究指導です。
研究テーマの設定から、先行研究の調査、実験や調査の設計、データ分析、そして論文執筆まで、研究の全プロセスを実践的に学びます。
学生の大半が学部から進学した20代前半の人たちです。

「実務家を養成する機関」としての大学院とは?

一方、実務家養成を目的とした大学院は、実践的なスキルや知識の習得を重視します。
ビジネススクール(MBA)や法科大学院、教職大学院などがこれにあたります。
働いている社会人が学生の前提ですので、
授業は夜間や週末開講、オンラインなど、社会人の学習スタイルに配慮したカリキュラムが特徴です。

実務家を養成する専門職大学院は、
働きながらキャリアアップを目指す社会人のニーズに応えるため、多くの大学で設置されています。
この制度の特徴は、理論と実践を架橋し、高度な専門性を持つ職業人を育成することにあります。

例えば、ビジネススクール(MBA)では、
企業の中堅管理職や起業家を目指す人々が学んでいます。
平日夜間や土日に開講され、経営戦略、マーケティング、財務などを体系的に学びます。
受講生の多くは30代後半から40代で、製造業や金融業などで実務経験を積んだ社会人です。

法科大学院(ロースクール)は、法曹実務家を養成する専門職大学院です。
企業の法務部で働く社会人や、弁護士を目指して転職を考える人々が学んでいます。
夜間コースでは、企業法務や知的財産法など、実務に直結した科目が提供されています。

教職大学院は、現職教員のスキルアップや、教員を目指す社会人のための専門職大学院です。
在籍する学生には、10年以上の教職経験を持つベテラン教員や、
民間企業から教育現場への転職を考える人々がいます。
学校経営や教科教育法などの実践的な科目が設けられています。

これらの専門職大学院の特徴は、理論だけでなく、
ケーススタディやフィールドワークなど実践的な学習を重視している点です。
また、同じ志を持つ社会人同士のネットワークづくりの場としても機能しており、
修了後のキャリア形成にも役立っています。

社会人が働きながら通える大学院の大半はMBAなどで私立の大学院

ここまで紹介した通りですが、
社会人が働きながら通える大学院というのはMBAなどをはじめとする実務家養成を目指した大学院です。
そしてMBAの多くが私立の大学院です。
国内の私大MBAは例えば早稲田大学は約340万円、
慶應大学は430万円、青山学院大学は約330万円など、
概ね300万円台を超える額です。
これが海外MBAともなれば800万円~2000万円です。。
カリキュラムがフレキシブルな一方で学費が高いのがMBAをはじめとする社会人が働きながら通える大学院です。

東大や国立大学院の大半は研究者養成指向の大学院

東京大学をはじめとする国立大学の大学院は、伝統的に研究者の養成を主眼に置いています。
特に人文社会科学系の多くの研究科では、
博士課程への進学を見据えた、より専門的な研究活動が中心となっています。
カリキュラムは、最新の研究論文の読解や、実験・調査手法の習得、研究成果の学会発表など、
アカデミックな活動に重点が置かれていますが、学生の多くは学部からの直接進学者です。
社会人学生の受け入れも行っていますが、
平日の日中に開講される授業や研究指導が中心となるため、
働きながら通学することは容易ではありません。
このように、国立大学院の多くは、実務家養成よりも学術研究者の育成に主眼を置いた教育を展開しています。
一方で、学費は私立大学院の約半額の130万前後。私立の大学院の学費では
進学をあきらめてしまう人でも国立の大学院なら頑張れそう、という人もいるかもしれません。
ただし、私立の大学院よりカリキュラムが社会人が働きながら通える仕様になっていないことが多いです。
国立大学院の学費で、私立の大学院のように社会人が働きながら通えるところはないのでしょうか?

東大大学院で夜間コース設定があるコース

そこで本記事の本題でもある働きながら社会人が通える、夜間授業設定がある、
数少ない東大大学院について紹介します。
なお、入試など選抜方法としてチャレンジしやすい東大大学院については
こちらの記事で紹介しています。

また、国立・私立を含めて、コスパで考える学費が安い大学院進学についてはこちらの記事で紹介しています。

 東京大学大学院 教育学研究科 大学経営・政策コース

東大の中でも学部生進学がメインの教育学研究科の中で、
唯一社会人が働きながら通いやすいコースが大学経営・政策コースです。
このコースは文字通り、大学の経営や高等教育の政策に関わる人を対象にしたコースで、
大学職員が進学することを想定されており、
大学経営、高等教育政策、教育財政、大学評価などの専門科目を中心に構成されています。
理論的な学習だけでなく、実際の大学経営や政策立案に活かせる、
実践的な知識とスキルの習得に重点を置いています。
また、データ分析や政策評価の手法も学ぶことができ、
エビデンスに基づいた意思決定能力の向上を図ることができます。
大学職員などの社会人が通うことを想定としているので、
授業は平日夜間、土曜日、集中講義で構成されて、働きながら通うことができます。
入学のための試験は、1次試験が英語と専門科目小論文、
1次試験合格の次は2次試験として研究計画書を元にした口述試験(面接)があります。
例年、出願時期は7月、試験は9月に実施されます。
大学経営・政策コースの試験の難易度は個別の情報は公開されていません。
しかし教育学研究科全体の志願者と合格者から合格率の倍率をみると、
・内部生(つまり現役東大生)は1.19倍
・他大生全体(社会人含む)は3.36倍
・社会人だけでは3.25倍
でした。つまり社会人であれば10人受験したら約3人合格するということです。

東京大学大学院 総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム(HSP)

東京大学大学院 総合文化研究科の「人間の安全保障」プログラム(略称はHSP)は、
貧困、環境、紛争、人権、開発などのグローバルな課題に対して、
「人間の安全保障」の観点から包括的なアプローチを学びます。
総合文化研究科内の
「国際社会科学専攻(国際関係論分野・相関社会科学分野)」、
「地域研究専攻」、「言語情報科学専攻」、
「超域文化論専攻(文化人類学分野・表象文化論分野・比較文学比較文化分野)」、
「広域科学専攻」のいずれかに所属しながら、
HSP独自のカリキュラムを履修するというユニークなコースで、
多岐にわたる学問分野を統合的に活用することが特徴で、
国際関係論や文化人類学、地域研究、さらには理系分野の広域科学まで、幅広い専攻での学びが可能です。

HSPの入試は、一般選抜と社会人特別選抜の2つの入試制度を設けています。
一般選抜では、専門科目の筆記試験による1次試験と、
提出論文・研究計画書の審査および口述試験による2次試験で選考が行われます。
一方、社会人特別選抜は、社会人としての経験を持つ人材を対象とした入試制度です。
出願資格は、大卒(もしくはそれに相当するもの)で、
出願時に企業や、学校・官公庁等に在職中であり、入学後も在職予定の人です。
選考では、一般選抜のように筆記試験は実施されず、
提出論文等、研究計画書、英語能力を証明する書類及び出身学校の学業成績の審査などの提出書類による1次試験と、
1次試験合格者を対象に提出書類もとにした口述試験による2次試験で行われます。
試験としては英語の試験は実施されませんが、
TOEFLまたはIELTSのスコアを出願時に提出する必要があります。
HSPは横断的なプログラムのため、総合文化研究科の倍率を見てもあまり参考にならないでしょう。
一般選抜は16名、社会人特別選抜は若干名、と難易度はかなり高いです
どちらの選抜で受験しても、カリキュラムは同じです。
社会人の学習に配慮し、一部の授業は18時40分以降の6限目や土曜日に開講されます。
なお、キャンパスは駒場キャンパスです。

東京大学大学院工学系研究科「都市持続再生学コース」(東大まちづくり大学院)

東大まちづくり大学院(通称「まち大」)は、
都市計画・都市デザイン・都市地域環境管理・都市マネジメント・その他「都市づくり・まちづくり」に関する
統合的・実践的・国際的な知識と技術を修得した
高度専門職能人の養成を行うことを目的とする社会人向けの大学院です。
都市工学専攻・社会基盤学専攻・建築学専攻を横断するコースで
都市計画などの実務に2年以上従事した社会人が対象で、
10月入学というのも他にない特徴です。

選抜は、1次試験として英語と専門科目、小論文があり、
2次試験が口述試験となり、同日開催されます。
出願時に志望理由を書くので他のコースの研究計画書同様に、
どのような研究をするつもりなのかを深めておく必要があります。

工学系研究科はそれぞれの専攻で合格者数が出ています。
https://www.t.u-tokyo.ac.jp/soe/admission/general-number

これによると、
定員12名に対して、
志願者数は内部生: 3名、他大学生: 54名 計57名
合格者数は内部生: 3名、他大学生: 15名 合計18名 という結果です。
コースの性質上、社会人が多いことを考えると、社会人の倍率は約3.6倍。
10人受験したら3人合格するという難しい試験です。
カリキュラムは平日の6限や土曜日に開催され、まち大も社会人が通いやすいような設定がされています。
なお、キャンパスは本郷キャンパスです。

まとめ 東大大学院にも社会人が通える夜間コースの大学院はある。しかし、、

ここでは社会人であっても、
夜間や土曜日授業などの設定があって通いやすい東大大学院の3つのコースを紹介しました。
平日夜や土曜日に授業があることで、働いていても通いやすい、というのは確かにそうです。
平日昼間のみに授業が設定されていると、
そもそも大学院に進むという選択肢すら選べない社会人にとっては重要な部分です。
しかし、“通いやすい”からと言って、それが“楽”を決して意味しないことは明らかです。
社会人が進学することを想定して、
試験内容は実務経験や専門知識に裏付けされた内容であるため、
その業界を未経験の社会人にはかなりのハードルとなりそうです。
また、平日昼間に大学院に通えるのであれば、
夜や土日はプライベートや授業準備、研究に充てることも可能ですが、
平日夜と土曜日に授業があると、日中は全力で仕事をして、土日も休む暇もない、
ということになります。
つまり、学部進学がメインの昼間の一般的な大学院であっても、
社会人向けの夜間大学院であっても、大変さは変わらないということです。
ただし、それであっても、仕事では得ることのできない知識、人脈などを得ることができるのは、
人生100年時代を見据えると、
やはり社会人は大学院に挑戦できるならしたほうが生き方としても楽しいことになるのではないかなと思います。

社会人で大学院に挑戦したいと思ったら、
同じようにアラフォー社会人で、
まったくのゼロから東大大学院に挑戦した経験をこちらのnoteで限定公開しています。
教育学が中心になっていますが、
小論文や研究計画書の書き方などは学術領域が違ってもある程度応用のできる基礎的な部分にまで触れています。

Brain版では、購入した人がこの記事を紹介して他の人が購入すると紹介料が入るようになっています。
内容は同じなのでお好きな方を選んでください。

-大学院
-, , , ,

Copyright © 超高齢社会の歩き方 , All Rights Reserved.